不動産所得の確定申告どうすれば?不動産に強い税理士が解説!

不動産投資をした後の初めての確定申告の注意点、収入の計上時期など、基本的な考え方を税理士が解説します。

不動産投資をしたことによって、確定申告を初めてする人は多いと思います。
もともと事業をしていた人や会社の経理をかじった事がある人は、不動産所得の申告も間違いが少ないかと思いますが、普段はサラリーマンであるため、自分の給与は会社の年末調整で完結し、確定申告自体を初めてする人は、注意が必要です。

所得税法にはさまざまなルールやトラップがあります。
単純に「入金額と支払額を集計して申告しました。」では、通りません。

不動産の確定申告に限らず、税法の申告で注意すべき点は、単純 かつ 大きな括りでは、2つです。

1つは、収入(売上)が正しく計上出来ているかという事です。

もう1つは、経費が正しく、多すぎないかということです。

ざっくり言うと、税務調査などで問題になるのは、売上が少なかった経費が多すぎた(または経費にしてはいけないものをしていた)かのどちらかです。

不動産所有者の皆さんは、どのような点に気を付けて確定申告書を作成すれば良いか解説したいと思います。

また、今回のコラムは、確定申告の基本的な考え方を書いたものです。
その申告が青色申告か白色申告か、その不動産の貸付けが事業的規模か否か、など、その人の個人差による論点は、また別のコラムで紹介します。
今回は、青色申告で事業的規模であることを前提にお話します。

1:収入と所得の違いとは!?

所得税の計算では、まず「収入金額」を確定させ、いろいろな「必要経費」を差し引き、1年間のもうけである「所得金額」を計算します。

収入金額 - 必要経費 = 所得金額 (1年間のもうけ)

不動産オーナーさんの場合は、まず年間の家賃収入を確定させて、そこから固定資産税、不動産会社への管理費、借入金利子などの経費を差し引き、1年間のもうけである所得金額を計算します。

実際は、所得税青色申告決算書(不動産所得用)を用いて計算します。

この用紙をいかに正確に作成するかが、不動産の確定申告のポイントになります。

2:不動産の収入の計上時期は?

不動産収入の計上時期について、説明します。
不動産に関わらず、所得税や法人税の基本的で、絶対的な考え方は、収益は、権利が確定した時点で計上するというものです。

1:原則

原則的な考え方は、賃貸借契約書の「契約による支払日」になります。
不動産収入がもらえる権利が確定したのは、契約による支払い日という考え方です。

2:前受未収の経理(継続記帳が要件)

一方で、例外的な取り扱いとして、「前受未収の経理」という方法もあります。
これは、貸付期間に対応する部分の金額を収入に計上するやり方(翌年1月に支払われる12月分は12月分の収入とする、など)で企業会計がベースになっている考え方です。
ただし、このやり方をするには、いくつかの要件があります。

<要件>

  • ・継続的に会計ソフトなどで帳簿を作成し、保存していること
  • ・前受収益や未収収益の明細を確定申告書に添付していること


これらの違い

この2つの方法が、イマイチわかりにくいと思いますので、解説します。

◇「当月分の家賃を当月末」にもらう契約の場合
この場合は、年末最後の12月分の家賃は、「支払いが確定した12月末」と「12月分の賃料」が同じになるので、どちらの方法でも差はありません。

◇「翌月分の家賃を当月末」にもらう契約の場合
こちらの方がよくある支払いパターンだと思います。
この場合は、「年末に受け取った翌年1月分の賃料」で違いがでます。
原則的なやり方の場合は、翌年1月分の賃料は、権利が確定した本年の収入に計上しますが、前受未収の経理の場合は、1月分として翌年の収入に計上します。

これら2つの方法は、毎月家賃を受取る契約の場合は、大きな差にならず、ズレても1か月の家賃をどちらの年分で収入にするかが論点になります。
毎年きちんと12ヶ月の家賃を計上出来ているかをチェックしていれば大きな問題になりません。

注意が必要なのは、「向こう1年分を年払いで受け取る契約」などです。
この場合では、原則の支払日に1年分を計上するのと、前受未収の経理の期間に応じて計上するのでは、賃料収入の額が大きく変わるので、契約書をよく読んで、どのように処理するのが正しいか検討する必要があります。

3:不動産投資における必要経費とは?

不動産所得の必要経費(経費になるもの)の考え方を説明します。

まず前提として、青色申告決算書(不動産所得用)「必要経費」の欄には、租税公課、損害保険料、修繕費、減価償却費、借入金利子、地代家賃、給与賃金などの項目がすでに印字済みで、独自に追加できる残りの枠は、5つしかありません。

◇必要経費の印字済みの科目の内容

            
租税公課固定資産税や事業税などの金額を記載します。
*所得税や住民税は、経費ではないので除きます。
損害保険料賃貸物件の損害保険料の金額を記載します。
*地震保険料など5年分を1回で支払った場合は、期間に応じた金額を記載します。
修繕費原状回復工事などの修繕費を記載します。
*エレベーターの交換や大規模修繕工事などの時は、その全額を本年の経費に出来ず、資産に計上すべき金額があるので注意が必要です。
減価償却費賃貸物件や設備の減価償却費を記載します。
*耐用年数や附属設備にできる金額など注意が必要です。
借入金利子借入金の利息部分を記載します。
*元本部分は経費に出来ないので除きます。
地代家賃物件の敷地が、借地権などで地主さんに支払った賃料などを記載します。
*ご自宅の家賃などは入れないようにしましょう。
給与賃金不動産賃貸業にて、従業員を雇う規模の人はその給与賃金を記載します。
*従業員を雇うほどの規模の人は稀なので、たいがい空欄になります。青色事業専従者給与などは別の欄で記入します。


これがすでに青色申告決算書に印字済みの項目です。

この他にどのようなものが必要経費になるのでしょうか?

税法の大切な考え方があります。

必要経費となるものは、収益と 「直接的に」 関係があるもの

というものです。

「直接的に」というのがポイントで、賃貸収入と直接的に関係ないものは、経費に出来ません。

よく、体が資本なのでスポーツクラブの会費は経費に出来ますか?と言われますが、これは 「間接的」なので、必要経費になりません。

そう考えると、その他の項目は、不動産管理会社に支払う管理委託料や仲介手数料、賃貸物件の水道光熱費などが該当します。
飲食代や書籍の費用は、他の不動産オーナーさんとの交流や不動産関連の書籍であれば、認められます。

これらが、必要経費の基本的な考え方になります。

あまりに不動産収入と関係とないものや多額の飲食代は、税務トラブルのもとになります。

4:青色事業専従者給与とは?

青色申告決算書に「専従者給与」と印字された欄があります。
事業を手伝ってくれている配偶者や親族に支払う給与についてのお話です。

自営業の人が、配偶者などの親族に給与を支払った場合のその給与は、必要経費に出来ないのが、所得税の基本的な考え方になります。
(これが出来てしまうと所得を家族で分散出来てしまうので)

しかし、5棟10室基準などを満たす事業的規模の青色申告者の場合で、その人の賃貸業にもっぱら従事している配偶者や親族がいる場合には、次の2つの要件を満たせば、青色事業専従者給与として、必要経費に計上することができます。
事業的規模でない賃貸オーナーは、この適用を受けることが出来ないので注意が必要です。

<そのための要件>

◇その1
青色事業専従者給与に関する届出書に金額や支払い方法を記載し所轄の税務署に提出していること。
提出期限は青色事業専従者給与を必要経費に算入しようとする年の3月15日までです。
(例えば令和2年分から適用を受けたいときは、令和2年3月15日までです。)

◇その2
青色事業専従者給与に関する届出書 に記載された方法や金額の範囲内で、かつ、その親族が、不動産賃貸業の仕事をした業務内容や時間に応じて、適正な金額であること。
*仮に第3者に依頼した場合の、給与や時給を考えて、高額にならないようにその金額を決定する必要があります。

<記入例>

5:土地等を取得するために要した負債の利子の額 とは?

青色申告決算書の一番下の欄に「土地等を取得するために要した負債の利子の額」とあります。こちらについて解説します。

不動産所得を計算する上で、多額の修繕がある年や物件購入初年度は、仲介手数料や不動産取得税等の支払いにより、不動産所得がマイナスになることがあります。
基本的にこのマイナスの金額は、他の所得(例えば給与所得)と損益通算が可能です。

ただし、借入金利子のうち、 「土地等」 を取得するために要した負債の利子の部分は、損益通算することができません。
(借入金利子のうち、「建物」を取得するための部分は、損益通算出来ます。)

◇土地等の取得に係る負債の利子の計算式

借入金利子 × (借入金の額 - 建物の取得価額) ÷ 借入金の額
*借入金の額は、現在の残金ではなく、最初の借入額を用います。

これは、バブル期に不動産投資をして、その借入金利子を他の所得と通算する節税が多かったため、それを防止するために出来たルールです。

税理士業務をしていると、この計算をせずに、その全額を給与と損益通算している申告書を多々見かけますので、特に注意が必要です。
不動産所得がマイナスになった時点で、このルールの適用対象になるかどうか、注意する必要があります。

まとめ

不動産所得の計算は、いかに賃貸収入や必要経費をきれいに集計し、青色申告決算書(不動産所得用)を適法かつ論理的に作成するかが大切です。

物件を増やしたい人は、この確定申告の内容で追加融資が判断されます。

過度な節税や本来や経費にならないものを経費にすると税務調査などで嫌な思いをすることもありますので、税法うんぬんの前に節度が大切です。

不動産投資は、老後の収入源を確保したい人、相続税対策で購入する人など人それぞれだと思いますが、純資産を増やすのはとても大切な考え方です。

毎年、赤字では余分な所得税は払っていませんが、純資産は増えません。

不動産投資は、ある程度長期の運用が前提になります。
そして、所得税は超過累進税率です。
今年は過度な節税をして税率が10%、翌年はその跳ね返りが来て40%支払うより、毎年なだらかに25%の税金を支払う方が、長期的な手取り額は増えます。

ぜひ税法の勉強もして、資産が増える賃貸経営をしてもらえればと思います。

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