7.事業用資産を買い換えた場合の特例
「特定の事業用資産の買換えの特例」とは、特定の事業用資産を売却し、他の事業用資産を購入した場合において、その買換えが一定の要件に当てはまる場合には、課税の繰延べを認めようとするものです。
ただし、「特定の事業用資産の買換えの特例」は、昭和38年に創設され、その後、複数回の改正が行われているので、実際に適用する場合は、適用の可否を十分に検討する必要があります。
この「課税の繰延べ」とは、例えば、既存の事業資産Aを1億円で売却し、新たな事業資産Bを1億円で購入した場合は、今回の譲渡については、20%部分が課税され、80%部分が繰延べの対象となる制度です。
(売却金額が、買換え資産の購入金額より多い場合は、課税される割合が多くなります。)
(買換え資産が特定の地域の場合は、20%の割合が、25%又は30%になります。)
また、「特定の事業資産」とは、自営業の人が自ら使用している工場や作業所なども含まれますが、当事務所のHPは、不動産投資家向けのサイトですので、不動産の賃貸物件を前提にお話しします。
この場合の賃貸物件とは、居住用物件も事業用物件(店舗や事務所など)も含まれます。
また、5棟10室基準を満たさない「事業と称する至らない不動産等の貸付」も含まれます。
要するに、貸付事業を行っている不動産かどうかということです。
不動産投資家を前提とした6号買換えの主な適用要件
- 譲渡する日の属する年の1月1日において、所有期間が10年を超える国内にある事業用の土地等や建物を譲渡して、国内ある土地等や建物の「買換資産」を取得すること。
- 買換資産の土地等については、一定の建物の敷地等でその面積が300㎡以上であること。
- 買換資産が土地等であるときは、取得する土地等の面積が、譲渡した土地等の面積の5倍以内であること。この5倍を超えるとその超える部分は特例の対象とはなりません。
- 資産を譲渡した年か、その前年中、あるいは譲渡した年の翌年中に「買換資産」を取得すること。
なお、前年中に「買換資産」を取得した場合には、「先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書」を取得した年の翌年3月15日までに、所轄税務署に提出する必要があります。
また、譲渡した翌年中に「買換資産」を取得する予定の場合は、譲渡した年分の確定申告書に「買換資産の明細書」を添付し、その買換資産の見積額で譲渡所得の計算をします。
実際に取得した資産の取得価額が見積額と異なるときであっても、特例の適用は認められす。 - 買換資産を取得した日から1年以内に事業に使うこと。
以上が主な適用要件となります。実務上は土地等が300㎡以上となると100坪以上の土地等を取得しなければならないので、高額となり、なかなか要件を満たす土地等がない場合も多いです。