5.収用等の場合の課税の特例
再開発や道路拡張などの理由により、個人の不動産を公共事業者に収用された場合(不動産の一部を収用された場合を含みます。)は、実質的に不動産を譲渡したことと同じなので、譲渡所得の対象になります。
ただし、不動産所有者の意思にかかわらない強制的な譲渡であるため、2つの課税の特例があります。
①収用等の場合の5,000万円の特別控除
収用等をされた場合に、譲渡利益から5,000万円が控除できる制度です。
適用のための主な要件
- 土地収用法、都市計画法等により、不動産が収用されて補償金等を取得すること。
- 最初に買取りの申し出があった日から6月以内に売却すること。
- その年において、下記の「②収用等の課税の繰延べの特例」の適用を受けていないこと。
②収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例」とは、土地収用法等により不動産が収用され、その対価して受け取った補償金でもって代替資産を取得した場合に、その収用された不動産についての課税が将来に繰延べられる制度です。
(その補償金に満たない代替資産を取得した場合には、その差額に対して課税が行われます。)
例えば、不動産Aを1億円で収用され、その際に取得した補償金1億円でもって、新たな不動産Bを1億円で取得した場合は、今回課税するのではなく、何年か後にBを売却するときまで、課税が繰延べられる制度です。
従って、不動産Bは、収用されたAの「取得費」を引き継ぎます。
また、不動産Bの取得価額が8,000万円だった場合は、補償金1億円との差額2,000万円ついて、一定の課税があります。
適用のための主な要件
- 土地収用法、都市計画法等により、不動産が収用されて補償金等を取得すること。
- 補償金をもって代替資産を取得すること。
(原則として、収用等のあった日から2年以内に取得すること。) - その年において、上記の「収用等の特別控除」の適用を受けていないこと。
※こちらの制度については、6月以内に売却の制限はありません。
1.主な補償金の種類と取り扱い
実際にご自身の不動産が収用された場合、取得される補償金の種類はその内容により多岐にわたります。
収用による建物の取壊しがある場合には「建物移転料」や「工作物移転料」、新しい住居に移る際の「仮住居補償」、賃貸物件だった場合のその家賃収入を補償する「家賃減収補償」などなどです。
これらの補償金はその名目により、課税される取り扱いが異なるので注意が必要です。
主な補償金の種類と取り扱い
補償金の種類 | 取り扱い |
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対価補償金 | 譲渡所得の総収入金額 (収用等の課税の特例の対象) |
収益補償金 | 不動産所得、事業所得等の総収入金額 |
経費補償金 | 不動産所得、事業所得等の総収入金額 |
移転補償金 | 実際の移転費用から控除して、残額は一時所得 |
「対価補償金」が譲渡((売却)の対価となり、「収用等の課税の特例」の適用となる部分です。
(注意1): | 「建物移転料」「工作物移転料」は、基本は「移転補償金」ですが、建物等の取壊しがある場合は「対価補償金」として取り扱い、収用等の課税の特例を受けることができます。 |
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(注意2): | 「収益補償金」については、一定の部分を「対価補償金」として取り扱うことができる場合があります。 |
(注意3): | 「経費補償金」については、「対価補償金」として取り扱うことができる場合があります。 |